被抑圧者の表現を追って踏み入れた学問の世界。
文学者で物書き、人権や差別といった問題についても発信しているから、何者か分からないと思われている節がある。
一貫して向き合ってきたのは言葉について。
良い文章ってなんだろう?
今まで漠然と考えていたことを、あらためて直視してみようと思う。
「良い文章を探すことは、喩えるなら、夜空を見上げて星座盤にない星を探すようなものかもしれない。確かに今、視線の先に星は見えない。でも、この視界の先に星があると信じることはできる。信じた方が、夜の暗さが怖くなくなる。そう感じられる人と、この本を分かち合いたい」――「はじめに」より。
文章を書く人・書きたい人に贈る、良い文章と出会うための25篇。
第15回わたくし、つまりNobody賞受賞以来、初のエッセイ集!
はじめに――とはいえ、を重ねながら綴る
急須のお茶を飲みきるまでに
何者かでありすぎて、自分以外ではない
押し込められた声を聞くことができるか
やさしい言葉
書いた気がしない本
憧れる言葉
羨ましい読まれ方
遠くの場所で言葉が重なる
伸ばせたかもしれない翼を語る
時々こうして言葉にしておく
感情の海を泳ぐ
生きられた世界に潜る
ずれた言葉の隙間を埋める
心の在処を表現する
世界を殴る
何かするとは、何かすること
自分がやるしかない証明作業
言葉にこまる日のこと
子どもと生きる
「仕方がない」が積もった場所で
「分かってもらえない」を分かち合いたい
下駄を履いて余力を削る
文章と晩ごはん
おわりに――綴ることは、息継ぎすること